「上林暁の小説」
この方の短編集の10の話のうち5つほど読みましたがどうも引っかかります。
親交のあった川端康成や彫刻家などの追悼の意を込めた話があるのですが、ご自身の小説として成り立たせようとしているからか、こちらの読みたい川端康成や彫刻家の生きる姿があまり見えてこず、ご自身のちょっと誇らしい故人とのエピソードを誇らしげに語っているところが引っかかるのです。
病気の妻のことも書いていますが、妻は上林氏に自分の昔のことを話すように言われ、嫌ですよ、あなたはまたそれを小説に書くんでしょう、と言っているのに、私には少し配慮が足りないと感じるような描写がありました。
結局読み進めていくとどれもそれが伏線で後から心に収まるようなしかけだったかという感じも受け、感動もさせられたところもあるのですが、ある部分やっぱり引っかかっては私は好きではありません。
ただ川端賞をはじめいくつもの賞を受賞されていますし、全集も出版されてもいますから、しっかり評価された方なのでしょう。
脳溢血で半身不随になりながらも、口述筆記で小説を書いていますから、相当の精神力があったと思われます。
「薔薇盗人」という話は、上記のような私小説とは違うタイプの小説で、じんときました。
小説そのものは好みではないかもしれないと思っていて、パラパラと解説をめくっていると本人の還暦を過ぎたころに見える肖像写真が目に入りました。
とても澄んだ優しい目をされていました。
申し訳ありませんが、驚きました。
読み込みが浅いのでしょうか。
残りの5つの話をちゃんと読まなければならないと思いました。
写真は一昨年のサンシャイン蘭展の展示花です。

C. World Vacation‘5th Avenue’ サンシャイン蘭友会らん展にて 2010/5/29撮影